困惑の日々――閉鎖病棟にて

頭の中

「あんたね~!アタシを誰だと思ってんのよ!!」

「…低俗な笑い声。生意気。」

これ、精神科に入院してたとき言われたこと。

本当に色んな人がいた。

最初の「誰だと思ってんのよ!!」の人。

この人は、当時40代半ばの女性。

相手がへりくだって、何でも

“はい、はい” と従わないと気にくわない人だった。

でも…

その人、何でもない “ただの入院患者”。

「誰だと思ってんのよ!」とか言われても…

また、何か偉そうに看護師さんに言っていた。

「私はあなた達みたいな下劣な人、認めません」

とか、なんとか。

…私はつい笑ってしまった。

《コイツ…お世話になってる身で何言ってんだよ。

あなたに認められなくても困らないよ…》

とか思ってたら、つい。

そしたら「あんたねー!アタシを~…」と。

《うるせーうるせー》

そう思いながら、無言で立ち去った。

そういえば看護師さん達も、

言われてるとき背を向けて聞いてなかったなぁ。

他にも…

たまたま、私含めて若い人だけで同部屋になった。

皆、20代。本当に優しい子達ばかり。

いつも和やかに話してた。

すると…「アタシのこと笑ってるんでしょ」

急に、廊下でピンク髪の女性に声を掛けられた。

顔がすごく可愛い人。

あの “ミキティ” そっくり。

何日か前に、

“あら~37歳!?二十歳ぐらいかと思った~” と

数人の話し声が聞こえてきた。

…彼女のことだった。

《わー…可愛い人…ほんと37には絶対見えん…》

そう思ってポカーンとしてると―

「私、知ってるから。いつもあなた達が~?

低俗な話して~?アタシを笑ってる事…(笑)」

…分からん分からん。

なんかニヤニヤしながら言われた。続けて

「低俗な笑い声…ほんっと。生意気。」

……やっぱり分からん。

『…何がですか?』

この言葉を言うのが精一杯だった。

意味が分からなすぎて。

彼女が言うには、私たちが彼女の名前を出して

いつも話してるのが聞こえてると。

そして、皆でバカにして笑ってる、と…。

そのころ、精神病患者にどういう症状があるのか。

どんな人がいるのか、あまり知らなかった。

私たちは、彼女の名前を知らない。なので

『あー…すいません。名前、知らないです。あと、あなたの話…出たことないです』

そう言った瞬間、彼女の目がカーッ!と見開き

顔が赤くなってきた。

…怖かった。初めて見た。あんな人…

「生意気なだけじゃなく…失礼。無礼。」

いっぱい喋ってる。

彼女の可愛い顔が歪んで、凄いことになってる。

何かが逆鱗に触れたらしい。

…知らんがな…。

私もオカシイが、レベチな猛者がたくさんいた。

何もないところを見てニヤニヤする人、

面会室で彼氏といちゃついたと自慢げに話す人、

裸のまま逃走したり、部屋の天井に火をつけたり…

《私…本当に変なのかな…?》

ここに居た時だけは、いつもそう思っていた。

―でも、ここ。過ごしやすかったかも。

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