午前9時。
私は、畳の部屋に転がってる。
足を垂直に上げて、ぶらぶらしてる。
いつものように間抜けな表情で。
端から見ると、きっと私はボーッとしてる。
暇そうに見えてると思う。
その通り。
ひま。暇ひまヒマ暇ひまヒマ暇ひまヒマ。
…今さらだけど、頭の中って見えないのな。
凄くない?
私がもし、国家の重要な秘密を握ってたとしても…
誰も知らない。
脳を切り開いても分からない。
私が喋らない限り、このまま封印することも出来る。
見た目は暇そうだから尚更…
まさか、私がそんな秘密を握ってるとは誰も思わないだろう。
その通り。
そんな秘密、私が知るはずない。
誰とも話さないし家からも出ないのに。
人脈もない。人望も。魅力も。
…なんだと………
………
《もしも私が “無敵の人” なら…お前らどうなってただろうな。お前も、お前もお前もお前も………》
あまりにも暇だと、こんな風に
本当に頭がおかしくなってくるという体験もした。
もう、二十年前には習得済み。
だからね。
あんまり暇になったらダメだよ。
私みたいに見えない敵と戦い始めちゃうから。
そこから、自分以外の人間がみんな敵に見えてきて…
現実で生きづらくなるから。
《シルバーウィーク……なにがシルバーウィークだよ。こっちはなんの予定もないんだぞ…》
朝の9時。
― ピッピッピー… ――
「キャーー!パパー!抱っこ!!」
車の鍵を開ける音と、奇声を発する子供の声。
楽しそう。いいな。
でもうるせーな。
私も車でどっか行きたい。連れていってほしい。
16時。
― ムウォーーン……ピーッピーッ ――
駐車場に車をとめる音。
さっきの家族が帰ってきたよう。
子供の声がしない。
疲れて寝てるのかな。楽しめたかな。
…よかったね。
―私は、今も朝と同じポーズをしている。
足を垂直に上げてぶらぶら。
同じく暇をもて余してても、心は穏やか。
何故かというと
さっき、スプラトゥーンで勝ったから。
たくさんお菓子食べたから。
端から見たら、朝と同じ私なのに。
人間世界を生きるというゲームにまだ参加したくなかった。
たくさん傷付いたし、いっぱい考えるの疲れたし、
みんなズル賢いし。
さっきも、過去に私をバカにしてきたやつのこと思い出してた。
《………しね。》
コロコロ頭の中だけが切り替わる。
私はまだ、畳の部屋に転がってる。
相変わらず、間抜けな表情で。
私が口を開かなければ、あいつに《しね》って思ってるなんて誰も思わないだろうな。
………
《許せん……お前は私の頭から出ていけ。じゃないと…こうして!こうしてこうして!こう!するぞ!!!》
…どうしよ。
まだ休み、あと2日もある……

コメント