あの夜のミルキー

あの頃

ドッドッドッド……ブォー!!…ブォンッ…

―静かな夜に響き渡る。多分、私を探す音…。

16の夜。

とにかく家に居たくない。

監視され、ロボットのように操作され。

《…どっか遠いとこに行きたい……》

初めて電車に乗った。

20:00頃は、まだ人が多かった。

なんとなく、テレビの天気予報で聞いたことのあるちょっと遠い場所へ。

―駅に着く。

皆、足早に散って行く。

行く当てもなく出てきた私は、駅にポツンと。

《どうしよう……とりあえず、お守りの梅酒を…》

手のひらサイズの梅酒を飲む。

《んーーー!胸が焼けそう。気持ちいい…》

イッキ飲みし、パワーをつける。

とりあえず、歩いてみる…が。

思ったより、だいぶ田舎。街灯も少なく、暗い。

《こわ…どうしよ…》

歩き進めると、灯りが見えた。

コンビニだ。

《あーー…良かった…》

安心して、大きく息を吸い込む。

そして小走りでコンビニへ向かう。

ミルキーと、チューハイを3本。買ったはいいが…

行き場がない。

《…帰りたい…》

泣きそうになりながら、コンビニの前にしゃがみ込んでチューハイをチビチビ飲む。

バッバッバッバッ……ブォーーーッ…

低い音が胸に響く。

《うるさいなぁ…てか、眩しい…》

2人乗りのバイクが近付いてくる。

若い兄ちゃんが2人。

ライトでこちらを照らしている。

「おー…何してんの?(笑)こんなとこでー」

『……』

「おーい。てかお姉さん系~っ!いや、ギャル?違うか…あっ。何歳??俺ら19。」

ずっと、ヤンチャそうな兄ちゃんが喋ってる。

「今からどっか遊び行く?」

『…行かない。帰りたい。』

「喋った~!!(笑)」

2人でパーン!と、ハイタッチをしている。

「えーっとぉ……じゃあ、ちょっと待ってて。遊んであげる。どうせ電車っしょ?朝まで無いから。」

2人して、またバイクに跨がった。

「待っといてよ!!!」

へな~っとコンビニ前にしゃがみ込んだ私を置いて、去っていった。

《…なに?……また来んのかな…》

3本目のチューハイを開けようとしたとき。

“パッパパーーー!!!”

クラクションを鳴らしながら、車が近付いてきた。

「お待たせーっ!」

助手席の窓から顔を出したのは、

さっきのヤンチャな兄ちゃん。

「はいーっはい!乗って!!」

後ろに乗るよう親指を立てて促す。

私はフラつく足で、なんとか立ち上がり…

当たり前のように乗った。

もう、一人は嫌だった。

「こんばんはっ!(笑)」

助手席の間から身を乗り出し、後ろに座る私に会釈する。

《すっごい元気…あー、ロンブーの敦に似てる…》

そんなことを思っていると、

【いいですか?発車しますよー】

運転席の大人しそうなお兄さんが初めて口を開く。

『あっ…はい。』

―ケータイを見ると、22:00を過ぎている。

車ではずっと、ヤンチャな兄ちゃんが喋ってる。

彼女のことや、実は夢に向けて勉強してること…

話をフンフンと聞いてると、急に。

コンビニの駐車場に車を停め、少し揉め出した。

《ヤバイ…私のせいかも…?》

そう思い、何故か

『あの、帰ります。ありがとう』

と言って車を降りた。

「え、え、え、どゆこと!?え、え??」

声が聞こえるけど、なんだか罪悪感がすごくて居られなかった。

《…はぁーーっ…ここら辺に座っとこ…》

チカチカと、今にも切れそうな電気の点いてる

集会所のような場所で朝まで待つことにした。

浅い階段に腰かける。

《さっきミルキー買ってて良かった…》

まだ24:00にもならない。

辺りはシーンとしていたが、不思議と怖くなかった。

いつもの甘さがジワッと沁みわたる。

《ふぁ~…これが自由かぁ……》

少し湿った空気の中で、酔いが回って心地よい。

ふーっと、自然と目が閉じる…

――気が付くと。ほんのり明るい。ケータイを開く。

《…5:00………あ、そっか…寝てたのか…》

ボーッとしながら、しばらく考え込む。

《どうしよ……電車…どっちだっけ…》

“ザッザッザッ…”

散歩中の人が三組くらい通った。

皆、こちらを見ないようにしている。

《ごめんなさいね…何もしませんので…》

とりあえず歩きながら道を尋ねる。

『すみません…駅…どこですか?』

なんとか時間をかけて、駅に着く。

《あーっ……やっと帰れる…》

ブォンブォンブォンッ…ドッドッド…ブォーォ……

遠ざかるバイクの音。

《…ん?…………違うか。》

電車に乗り、結局…

あれほど嫌いな家に帰る。

母が鬼の形相で待っていた。

「きったな!どこ行ってたのね!?あんた…目の下が黒いよ!化粧落としなさい!もう…風呂に入りなさい!!」

さっそく、うるさい。

でも…あんなに嫌だったはずの家に着き、

張りつめていた何かが切れた。

家のぬるいシャワーを浴びながら、ふと浮かぶ。

《あの兄ちゃん達…仲直りしたかなぁ…》

だんだん、身体から力が抜けていく。

今でもミルキーの包みを開けると、

ふわっとあの日の空気に包まれる。

もう戻れない、甘い夜。

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