「波をちゃぷちゃぷ ちゃぷちゃぷかきわけて~♪…」
急に母が歌いだした。
私と兄が、まだ小学生にあがる前の話。
テレビもつけず、静かな夜だった。
母と三人で、ひょっこりひょうたん島を熱唱したのを覚えてる。
つられて真剣な顔で歌いだす、私と兄。
負けじと大声で歌う、母。
「だけど僕らはくーじけない~♪泣くのはいやだ笑っちゃおう 進めー!!」
ラストに近づくにつれ、テンションがあがる三人。
最後の「ひょっこりひょうたんじ~ま~~!!!」
…歌い終わった。同時に、母が爆笑しながら
『三人でのど自慢に出れるね!!(笑)はーっはっは…』と。
私と兄は、歌い終えたばかりで少し疲れている。
笑う母を横目に、真面目な顔で息を整える。
いまでも楽しかったあの空気を覚えてる。
―あれから30年以上が経った…色々あった。
私は精神的におかしくなったり、人生に絶望したり。
兄は、早いうちに家を出た。イケメンの顔を生かしてホスト…なんてせず、コツコツと地道に働いている。
母も。
離婚を経て、一人で子供と6匹の猫を育て、今も毎日働いてる。
母は猫育ての天才。
ひょっこりひょうたん島を大熱唱していた、あの頃。
「苦しいこともあるだろさ 悲しいこともあるだろさ~…」
あれからの人生、
想像もしてない悲しみ苦しみがあるなんて知らなかった。
大事なあのこを亡くし、あの人も亡くなり。
私の心も、どこかで死んでしまって。
…今は、この章を歩んでると思ってる。
「だけど僕らはくじけないー泣くのはいやだ笑っちゃおう 進め!」
すごい。
これでも、ここまで挫けず来れたんだな。
みんな色々あるよね…生きてれば。
三人で希望を抱いて歌っていたあの日を思い出すと、なぜか涙が出そうになる。
今日みたいに、とことん沈んでしまう日。
沈みきらないようにするのが今日のゴール。
…なんかごめん。あの日の私たち

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