男より夜道より怖いもの

頭の中

年頃の娘に、最近よく

『夜は危ないから一人で歩いちゃダメよ』

『男の人は力も性欲も強いから二人きりになる時は気を付けるんだよ』

とか話してる。

すると娘が

「ママは夜も一人で歩くし、男の人も怖くないよね?なんで?」と。

…確かに。

怖いとしたら基準は、“絶対に勝てなさそう” 。

若い頃、夜道を一人で歩いてるとき男に襲われそうになった。

強盗目的か、ワイセツ目的かは分からない。

急にガッと腕を掴まれてビックリした。

振り向くと、目がバキバキの男。

《なに!?怖い!!》と思ったと同時に

《やらなきゃ殺られるかも》と感じた。

だから、戦った。

私の右手は男に掴まれてる。

男が振り上げた右手をグッと掴んだ。

《ぜっったい…負けない…!!》と思い、声も出さなかった。

声を出すと、そっちに力を持っていかれそうで。

でも相手…めっちゃくちゃ強い。

気を抜いたら一瞬でやられそう。

でも、お互い無言で掴み合ったまま。

しばらくすると

「おまっ…強っ」

と言い残し、男が走って何処かへ消えた。

《……勝った…のか?》

私も急いでその場を離れ、無事家に着いた。

《もしもあの時、怯んでいたら…》

いま思い出してもゾッとする。

他にも。

男とケンカになったとき。

相手が酔っていた。で、急に胸や腕を殴られた。

《痛っ!!…く…ない…??》

確かに殴られてる。

でも、不思議と痛くない。

…いや。痛くないんじゃなく、恐怖の方が遥かに勝ってたのかもしれない。

男は顔を真っ赤にして、顔には血管が。

猿みたいですんごくコワイ。

《どうしよう…どうしよう…》

相手が可哀想になってきた。

だって、“本気で” 怒ってるから。

力いっぱいグーで殴ってるから。

《負けなきゃ》

そう思い、一歩だけ後ろへ下がった。

とにかく落ち着かせなきゃ、負けたフリをしなきゃと思い。

そうすると男はハァハァ言いながらやめた。

…この時、本当にどうしたらいいか分からなかった。

つぎの日、私の体はちゃんとアザだらけ。痛い。

でも

《あいつ…顔は避けてくれたんだな》

と、妙に感心したのを覚えている。

過去にこういう体験があるのに、

夜道も、男の人と二人きりになっても…何故か怖くない。

でも。

歯を剥き出して、顔を真っ赤にして怒った猿の顔が、今でもいちばんコワイ。

あんなのが目の前に来たら…絶対勝てない。

直視できない。怖すぎて。

これは逃げるしかない。

ただ、これ…

娘にどう説明しようか…。

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