父がこの世を去った歳に、私も近付いてる。
16の春。
知らせを聞いたときは、信じられなかった。
でも、電話越しの母の様子から…信じざるを得なかった。
離れて暮らしていた為、皆で急いで向かう。
―見たくなかった。
なのに。顔を見た瞬間…
目が離せなかった。
見たくないのに、凝視したまま動けない。
初めて、ショックで息が出来ない。
いつもと違う父の姿が…すごく怖かった。
肌色じゃない肌。
父だけど、あれは父じゃない。
母も兄も泣いていた。
見たこと無いほど、号泣していた。
でも私は…泣けなかった。
とにかく、胸の奥から深く息を吐くことしか出来なかった。
しばらくは
「あんたは薄情だよね。信じられない」と
言われ続けた。
…よく覚えてる。
見てるだけで辛くなるほど泣いてる母と兄。
神妙な面持ちで下を向いてる病院の人たち。
そこに―
真顔でまっすぐ父を見つめる、私。
感じたことのない、悲しくて灰色の空気に…
押しつぶされてしまいそう。
《なんで……なんで………》
この言葉が渦巻くばかり。
“私は半分死んだ” という感覚。
居ないんだよ。もう。
…お父さん。
…生きていたんだよね。
早すぎて。早すぎるよ。
祖母と母が、よく言っていた。
「お父さん “も” よく悩んでた。繊細だった」と。
楽しく仲間と飲んだ、その夜。
父は、生涯を閉じることを選んだ。
楽しい空気を纏ったまま終わりたかったのかな…なんて。
あの日の父の年齢に、近付いてる。
《私も、もうすぐ39歳…》
―あのとき、確かに泣けなかった。
でもその分ずっと…残ってる。


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