ここにいるのに

頭の中

中2の夏。

冷房が効いた部屋で、冷や汗をかきながら母に言う。

『…学校行きたくない』

「はぁ~?なんでねっ?いじめられてるのね!?」

キッと睨み、なぜか怒る母。

『…いや……』

「じゃあ行きなさい。ダメよ。ダメに決まってるでしょ」

鼻で笑いながら、私に背を向ける。

―奇跡は起きなかった。

今にも吐きそう。

次の日から、いつも通り登校。

教室で、私は透明人間になる。

《早く終われ…》

心で唱えながら、時計を睨み付けるのが日課。

私は透明人間のはずなのに。

「…くさっ」

「きんも(笑)」

周りにも丸聞こえ。

カーッと身体が熱くなり、余計に汗がふきだす。

私は下を向いたまま、気配を消す。

とにかく、とにかく我慢。

耐えてる途中―

《あ、もう無理だ。戻れない》

そう気付いた瞬間、“本当の私”はサーッと消えてしまった。

♪~キーンコーン カーンコーン…

一目散に教室をでる。

《私は汚くてクサイ。早く一人にならないと…》

全速力で家まで走る。

汗だくでもスカートが捲れても気にしない。

玄関を開けて、急いでお風呂場に。

《早く…早く…!!》

この汚い私を清めないと。早く…

『冷たっ…』

風呂にはシャワーがない。

蛇口の水を目一杯まわし、直接頭を流す。

《バレちゃいけない。早くしないと帰ってくる…》

頭を爪で掻きむしり汚れを落とす。

気が済むまで浴びて、脱衣所へ。

びしょびしょの髪を急いでドライヤーで乾かす。

母の帰宅後、いつものように普通の顔で過ごす私。

―あの日から、本当の私はどこかへ消えた。

ここにいるのに。

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