三千円なら入れます

あの頃

未だに分からないことが多い。

昔、スナックでバイトしていた。

店のママと、数日はうまくいっていた。

だけど二週間を過ぎた頃から…

「これ。入らない?」と。

何かのチラシ?お札?なんか色々、見せられた。

私は愛想笑いしながら

『んー…すみません』と返事。

でも次の日も、その次の日も。

「どう?考え変わった?ここはねー…」

その “会” の良いところを、ずっと喋ってる。

愛想笑いで数日かわしたが、あまりにしつこい。

だから聞いてみた。

『それに入らないと、ここで働けないんですか?』と。

「…んまぁ…!」

驚いてる。

まるで、汚いものを見るような目で。

《えっ…ダメだったかな…》

そう思っていると、ママさんはプイッとして

店の裏へ。

《は?…どうでもいいわ。金さえちゃんとくれれば》

その日、いつも通り日払いでバイト代を貰った。

次の日。

新しいバイトが入ったとかで、しばらく呼ばれなかった。

3日間、連絡がなかった為こちらから電話。

『もし、もう出勤できないのであれば言ってください。次のバイト探しますので…』と。

「どちらでも」とのことだったが、

なんか面倒なので

『では次を探します。お世話になりました。』

と、切った。

約1ヶ月後…

あのママさんから電話。

「あらー…元気?もう、あなたとは話もしたくないと思ってたんだけど…。今日、お店来てくれない?団体客が入ったの。本当は、もう話もしたくなかったんだけど。」

《…なに言ってんだ、このババア…》

あ然とした。

『あー…無理です。失礼しますー』

ガチャッ

困惑した。

その後、また別のスナックでお世話になった。

そこでも数日働いたところ…

今度は、お客さんから。

「ここの女は全員入ってる。年会費も今なら五万円で…」と、説明しだした。

周りの従業員の女性も、ニコニコしながら

こちらを見ている。

《こわっ》

いつものように愛想笑いで、

『大丈夫です…すみません』と言った。

相手はもちろん食い下がらない。

でも、しつこすぎるしマジで入る気なんて無い。

お金がかかるなら尚更。

なので、

大変生活が困窮してる為ここで働いてるということ。

そして、数万円も捻出できないということを説明。

「…まぁ…それは…でも皆入ってるから…」と。

相手が引き下がらないので、私なりに出せる金額を計算した。

『じゃあ…安くしてください。

年会費、三千円なら入れます』と。

なぜか皆、顔がひきつっていた。

次の日から。

もう、誘われなくなった。

代わりに「おかしい女」と、一部の客から言われるように。

――わからない。

私が頭を捻れば捻るほど、この世界からズレていってる気がする。

…年会費、一万円なら良かったのかな…

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